つれづれおきば。

筆名「わらび」の一次創作置き場。SSだったり短歌だったり。

【Twitter300字SS】里帰り

Twitter300字SS第45回お題「帰る」より。

https://twitter.com/Tw300ss/status/1023176268987002881 

本文はつづきより。

 

 

【里帰り】

 

 車から降りると、夏の太陽に焼かれた風から歓迎を受けた。頬が暑い。

 でも、その風の中に懐かしい草木の匂いを確かに感じて、自然と口元が緩んだ。故郷の匂いだ。

 暫く眼下に広がる景色に見入った。両親は既に鬼籍に入っており、生まれ育った家ももう残っていない。目の前に広がる光景は、記憶の中の場所とは似ても似つかぬ姿に変わってしまった。大切な故郷はもう、失われてしまった。そう言われても仕方のない現状。

 それでも。

 ここは確かに故郷であり、帰ってくるべき場所なのだと思う。だから胸を張り、大きな声で今年も言う。

「ただいま!」

 そう叫べば。

「お帰りなさい」

 まるでそう言ってくれているように、ダムの水面がゆらりゆらりと揺れた。

 

【三百字 改行・スペース含めず】

 

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タイトルシンプルシリーズ(タイトルつけるの苦手)

 

帰るべき場所が物理的に確かに存在しているというのは、幸せなことなのかもしれません。

と考えさせられた平成最後の夏になりました。

姿は変わっても、故郷は「ここ」にある。

 

最後に種明かしする系が好きです。

安直なオチで申し訳ないですが……