つれづれおきば。

筆名「わらび」の一次創作置き場。SSだったり短歌だったり。

【Twitter300字SS】ふたりぼっちの月見酒

Twitter300字SS第37回お題「酒」より。
https://twitter.com/Tw300ss/status/914097507411431424
本文はつづきより。




「遅くなった」

月も随分昇ってからの到着になったが、親友はいつもと変わらない笑顔で迎えてくれた。

「今夜は中秋の名月。月見酒にしたくてな」

持参した純米大吟醸酒を早速開け、揃いの杯に並々注ぐ。

「じゃ、まず一献」

一度軽く杯を持ち上げ、そのまま一気に煽った。
秋の夜風を受けて程良く冷えていた頬に熱が仄かに灯る。
親友は何も言わず、ただ静かに微笑み、杯の中で満月が揺らぐことなく光っている。
そんな静寂が心地よい月夜だった。

「今年は満月のせいか一段と酒が旨い。また来年もいい酒を共に呑もう」

そして最後に親友の杯を手に取り、一気に飲み干した。


黒縁の写真立ての中で、親友はいつまでも満月のように優しい笑顔をたたえていた。


【300字(改行含まず)】


今回のお題は「酒」
酒は弱くて飲めないもので、中々実感のある話が書けなくて恐縮です。
ちょうど中秋の名月を終えたばかりだったので、月見酒にしてみました。
何故親友が黙っていたのか、酒の描写で「?」となって、最後に「!」と驚いて貰えれば嬉しいです。
……相変わらずの親友死亡話である。